忍者ブログ
連載中小説
[33]  [32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27]  [26]  [25]  [24]  [23
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

いいトコ取り



 あれから数日経った。
 事ム所では、相変わらず宴会が続いている。

 タバコ代をせしめた山下党首は元より、同年輩が来た事が嬉しい尾崎顧問。
 博学だと褒められて嬉しいロッカ。
 恐い顔の樺山にしたって、自分自身が党首代行として取り決めた結果を、何となく誇らしく感じている様子だ。
 小松さんは嬉々として、便所掃除や風呂の掃除をしてくれるので、秀雄もおおいに助かっている。

 このように、小松さんはすぐに馴染んだ。
 品があって、おっとりした性格は皆に好かれている。
 明治時代から続く、老舗の菓子屋の主人だった男なのだ。

 だが秀雄は思うのだ。
 馬鹿にされ、踏まれても蹴られても、「いいトコ取り」をして惨めな自分を慰めている。
 綺麗な沙耶花と、一時とはいえ関係が持てただけでもラッキーじゃないか。
 こんな風に考える浅ましさが、むしろ老化そのものの正体ではなかろうか? 
 と。

 ──小松さん。預金の事は「もういいんだよ」って言ってるけど。よーするに泣き寝入りじゃねえか! 許せねえな。

 行政の問題だってそうだ。国の、都の、県の、市の、町の、村の、諸問題だって、いつでもそうだ。
 利権がらみの事業が頓挫した場合なんか、利権を食っちゃって、なおかつ、知らを切っている権力者に対して、庶民はいつだって「いいトコ取り」をして、許してやっている。

「いんや、あの政治家だって、あすこの社長さんだって、我々の為に一生懸命だったんだ。予算を組みなおして仕切り直しをするって? うん。仕方のない事だよな」
 その結果、またしても何億も何十億も、うやむやに消えたりする。
 何事も、忘れてやる事こそが美徳だ。と言わんばかりだ。

 特に老人はその傾向が強い。
 限り在る人生、不正を正す時間はもう無いって事だ。
 権力者は、うまうまと、そこに、つけ込んで、新たな利権を発生させ、それを得るのだ。

 秀雄は若さ故に、そんな欺瞞に満ちた人生感に、高齢化社会の在りように、立腹するのだ。
 勿論、全く自覚はしてないのだが。


 スケベ心の方は、よく自覚している。

 ──うーん! ストリッパーの沙耶花かあ!
 ──芸能人みたいな写真だな。
 ──綺麗な色白女。
 ──パイパンなんだって?
 ──くそ! 気になって眠れねえ!

 小松さんは沙耶花の写真を、自分の店の高級菓子箱に入れて、大切にしていた。
 秀雄にも何度か見せてくれた。
 その箱には、沙耶花の2LDKマンションの合鍵も入っていた。
 秀雄はさっそく失敬して、スペア・キーを作った。
 住所は孝太郎に聞いた。

 ──いい女だ。そして悪い女だ。
 ──いよっしゃー! 一丁、やったろかー!

 秀雄が出動する。



















PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
千駄山ロッカ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
最古記事
(05/28)
(05/28)
(05/28)
(05/28)
(05/28)
P R
忍者ブログ [PR]


(Design by 夜井)