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Wひょうたん宇宙




時空艦フェロモン号は、友和少年を送るべく、モヘン・ジョダロから196×年の日本へと向ったのだが……。

ママが言った。
《緊急連絡。緊急連絡。時空座標HBE6KA。進行方向に、大きな磁気嵐。コトミ艦長、このまま突っ切っちゃう?》

「あ、待ってママ。不必要な危険は回避しましょ」
とコトミ艦長。

《じゃ、パラレル航路を通るわね。時空HBE6KA。一度、抜けるわね。……はい。……今。抜けたわ。……Wひょうたん宇宙へ入ったわ》


時空HBE6KAを抜けたフェロモン号は、時空ノベルズ・ロッカの「Wひょうたん宇宙」へ入ってしまった。
まあ、時空ノベルズ・ロッカってのは、この「お話」を書いている頃は、まだ存在しないから、今、付け足しているのだが。

《時空ノベルズ・ロッカは迷い込んだら大変な所だわ。「雨のち強姦」とか「参照太夫の虐殺ファイル」とか「元祖・超電導美那子」とか、エッチな世界があちこちにあるわ》

「まあ」

「まあ」

「まあ」

「ママ、座礁しないように、慎重にすすんで……」

《任せなさい》


──ブザーブザーブザーブザー

と、いきなりブザーが鳴った。

《救難信号受信。救難信号受信》
モニターには、大型戦闘艦に追跡されている小型艦が、映し出された。
すかさずママは、戦闘モードのスタンバイ。

「どちらも、連盟艦じゃないし、エステボーとも違うわね」
と、コトミ艦長。

大型戦闘艦がビーム砲を発射した。
小型艦はすでに何度か被弾している様子だ。

「ほっとけないわ。ママ、高速信号弾発射!」
発射された高速信号弾は、大型、小型、両艦の間で炸裂した。

──パッ!



目も眩む閃光に、モニターも真っ白になる。
これ幸いとばかり小型艦は、フェロモン号に隠れるように、回りこんできた。
《小さい方から通信よ》

「当艦、フェザーン商船。感謝する。当艦に戦闘の意思無し。引き続き調停活動の続行を、お願いしたし」

コトミ艦長が言う。
「ママ。返事して」

《当艦、銀河連盟245ヶ星系軍、戦闘時空艦フェロモン号。連盟時空艦規約108条により、貴艦を民間商船と認識。従って、これを救助します。連盟時空艦規約108条とは、いかなる時空域においても、連盟船、その他に関わらず、民間船に救助を要請された場合、無条件にこれを救助するというものです。安心して》

大型戦闘艦は停止した。
巨大な砲門がフェロモン号を睨む。

「やる気かしらね」
とコトミ艦長。

《通信、送り続けてるのに……》
とママ。

クルーは、固唾を呑んでモニターに見入る。
友和少年は、コクピットの椅子で、鼻ちょうちんを膨らまして眠っている。

「なんだか電車みたいな格好の宇宙船」
とaタイプ。

ママが解説する。
《あの艦は約100人乗りよ。人工知能制御艦じゃないわ。銀河系共通マシン語で呼びかけても、反応が無いの。マニュアル艦ね。Wひょうたん宇宙は、フェザーン回廊とイゼルローン回廊っていう、二つの通路を持つ変わった宇宙なの。現在、回廊を挟んで、帝国軍と共和軍に分かれて戦っているのよ。あ、通信よ》

モニターには、いかにも折り目正しい、軍人然とした、ハンサムな男が映った。
フェロモン号の美女達がどよめく。

「貴艦の通信は、礼節にはのっとっているが、意味のない眼くらましと解釈する。何が『銀河連盟』だ! 何が『連盟時空艦規約』だ! おおかた、ペテン師ヤンの謀略であろう。このミッターマイヤーが、そんなトリックに引っかかると思ったか? フェザーン船を引き渡せとは言わぬ。即時降伏しろ! 猶予は3分だ。しからずんばフェザーン船もろとも、宇宙のもくずとなるであろう。ローエングラム帝国万歳!」
そしてプツンと切れた。

クルー達はざわめく。
「なによ。この態度!」

「ちょっとハンサムだと思って」

「馬鹿にして」

「電車のくせに」

コトミ艦長が言った。
「フェザーン船ってのに、こうくっつかれちゃ、逃げる事も出来ないわね。仕方が無い。先制攻撃するわ。アクメ砲スタンバイ。動力部を狙って。出力50パーセントでいいわ」

aタイプが言う。
「偉そうにカッコつけてる方が悪いんだもん」

「撃て!」
とコトミ艦長。

──ボシュワアムウウウウムムウウウ!
── ドッカーンンン!



ローエングラム帝国軍の、疾風オルフこと、ミッターマイヤー上級大将の旗艦『人狼』は、動力部にアクメ砲を食らった。
すかさずコトミ艦長。
「戦闘艇が飛び出してきたら面倒だわ。ママ。撃って」

《ゼリービンズ弾でカタパルト口を塞いでやるわ》

──プチュムプチュムプチュムプチュム

戦艦『人狼』もビーム砲を発射したが、フェロモン号のシールドに遮られた。
大破炎上する帝国宇宙戦艦『人狼』を尻目に、フェロモン号とフェザーン商船はランデブー飛行を続けた。


フェザーン商船から通信が入った。
「感謝する。私はフェザーン自治領の商人、ボリス・コーネフ。お礼にコンテナを一つ置いてゆく。お受け取り願いたい」

「あ。ちょっと待って。こちらもコンテナを一つ打ち出すわ。『贈り物には贈り物』が、銀河連盟時空艦の習いなの」
とコトミ艦長。
そして、ふり向いてaタイプに言った。
「中尉、危険物がないか調べて。ヤバそうなら、破壊していいわ」

「わーい! やっと出番が来たもん」
さっと敬礼したパイロットのaタイプ中尉は、ヘルメットをかぶり、小型戦闘艇に乗り込み、発進した。



フェザーン商船は、漂うコンテナを、直に回収している。
コンテナの中では「ぶもうー」と、デネブ牛が鳴いていた。
象ほどもある、最高級シモフリ。銀河グルメ年鑑にも載っている名産牛であった。

通信が入った。
「いただきます。共和軍の兵士達は、若く食べ盛りの連中だ。提督ヤン・ウェンリーに代わって、お礼申しあげる」

aタイプ中尉は、危険物、毒物のチェックを済ませると、フェザーンのコンテナを牽引して、フェロモン号へ戻った。
そして、コンテナを開けると、中には古典的な武器が入っていた。

「え? これ、マサカリ?」

「マサカリって金太郎さんの武器でしょ?」

「マッサカーって感じ」

「アハハハ。それ駄洒落?」

「江守友和じゃあるまいし」

ママが言った。 
《Wひょうたん宇宙では、ゼップル粒子っていう、火器を使えなくする兵器があってね。だから、男どもはマサカリを使って、昔の武士のように戦うのよ》



それからフェロモン号は、時空SENDAYAMAへ再突入すると、196×年の日本に友和少年を下ろし、次の特異点警報の鳴った戦国末期、安土時代へと向った。

──『銀河系時空船規約』第17条。コスモス・メッセージによる特異点の追跡、調査の義務は、すべての時空船、船長が、優先的に負うものとする。
軍、民間、連盟の如何を問わずとしたこの規約は、『銀河連盟時空艦規約』より、更に重いものであった。


                      山崎の合戦 「宙賊エステボーの奇襲」へ続く


今回に限り、『銀河英雄伝説』の宇宙に入り込んでしまったフェロモン号であった。
アクメ砲を食らわしたりして……。
愛妻家のミッターマイヤー提督には、まことにすまぬ事をした。
陳謝。千駄山ロッカ。





注。この頃「山崎の合戦」は、一話づつ連載の形で投稿していました。

なお、当初、「山崎の合戦」では、この「ゼップル粒子弾」を使ってエステボーのレイ・ガンを沈黙させるつもりでした。

でも、それをやっちゃうと、完全に、「二次小説」へ行っちゃいそうで、ボツにした次第です。










 












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